手段と目的を間違えると子供は育たない
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みなさんは子供に何かを教えたり、あるいは自分が何かを学習したりするときに、手段と目的を意識していますか?
なぜいきなりこんなことを聞いたのかというと、手段と目的を明確に区別して子供と接している大人が少ない、と感じたからです。
手段と目的を混同してしまうと子供は育ちません。
むしろ、子供にとって悪影響を及ぼす危険性さえあります。
手段と目的の使い分けを正しく理解して、子供の良いところを伸ばせる大人になりましょう。
目次
「意味のない走り込み」それで野球がうまくなるの?
今朝、河川敷を散歩していた時のこと。
川沿いの野球場で子供たちが野球の練習に打ち込んでいました。
初めは私も、ボールに追いつかないながら一生懸命に白球を追いかける子供たちを見て、「お~頑張ってるなぁ」なんて思っていました。
しかし、しばらく見ていると異変に気が付きました。
先ほどからコーチが打つボールに追いついてキャッチできている子供が一人もいないのです。
それどころか、子供のはるか後ろに飛んだボールを追いかけて、反対のグラウンドの端っこまでヘロヘロになりながら追いかけている始末です。
コーチの技術不足かとも思いましたが、そうではありません。
なぜなら、そのコーチは毎回狙いすましたかのように遠くにノックを打ち、追いつけない子供たちに「そんなのも取れないのか!とっとと走って取ってこい!」と怒号を浴びせていたからです。
これを見て私はショックを受けました。
未だにこんな指導をしている大人がいるのかと・・・。
本来、野球のノックというものは取ったり投げたりする能力の向上のために行われるものですよね。
しかし、今朝私が見た野球チームのノックは、少なくとも野球技術の向上のためには何一つ意味を成していませんでした。
本来は野球の、守備技術の向上を目的として、選択される手段であるノック。
しかし、このチームでは、ノックをこなすことを目的になってしまっていて、手段と目的が混同してしまっていたのです。
これでは全く野球に役立ちませんし、疲れるだけなのでやらない方がまし、ということになってしまいます。
そして、一番まずいのが、こんな意味もなく楽しくもない練習を強いられて、子供たちが野球を嫌いになっていってしまうことです。
運動だとイメージがわきにくい人は、これを勉強に置き換えれば理解できるでしょう。
何のためにやっているのか、という目的のない勉強は非常に苦痛であり、学習したことも身に付きません。
こんな意味のないことで、子供たちの心を苦しめたり、貴重な子供時代の時間を潰してしまったりしてはいけないのです。
子供に教える時には「目的」をはっきりさせる。
先ほどの野球チームのような事態を防ぐためにはどのようにすればいいのか。
それは、「目的」をはっきりさせることです。
何のために行うのか、どんなことを身に付けさせたくて取り組ませるのか、ということを大人が熟考してはっきりとさせなければなりません。
ただ何となく、ということではいけないのです。
学校の授業を見ていても目的をはっきりとさせているか否かで様子が全然ちがいます。
「子供たちは楽しく参加しているけれど学びのない授業」と「子供たちが楽しく参加し、かつ学びを深めている授業」の違いは教師が目的をはっきりと自覚しているかどうかの差なのです。
指導技術うんぬんはハッキリ言って微々たる差です。
野球の例でいうならば、素振り一つ行うにしてもどんな目的をもつかで全く内容が変わってきます。
・自分のタイミングを掴むためにやるのか
・フォームを安定させるためにやるのか
・スイングスピードを速くするためにやるのか
目的のない学習はハッキリ言ってやるだけ時間の無駄です。
そんな無駄な時間を過ごすならば、その時間を食事や睡眠、遊びに当てた方がよっぽど成長を促します。
全ての活動・学習には目的がある。
これを忘れてはいけないのです。
目的を定めた上で、手段を吟味する。
ここまでお読みいただいた方には、目的を定める重要性を理解していただけたと思います。
目的が決まったら次のステップです。
「目的を達成するためにどのような手段を取るのが最適か」ということを吟味するのです。
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スイングスピードを速くしたのに、ノックを100本受ける人はいませんよね。
スイングスピードを速くしたいのであれば、素振りや筋力トレーニングといった手段を選択するはずです。
この手段の選択を誤ると、目的が定まっていても全く結果に結びつかない、という事態を招いてしまいます。
米大リーグで活躍しているダルビッシュ有投手が過去に「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。」という言葉をツイッターで投稿していました。
この投稿の「頭を使って」という部分が手段の選択という意味だと私は解釈しています。
子供の「実態」を見過ごしてはならない。
「目的と手段について吟味できたからもう完璧。」というあなた。
本当にそうでしょうか?
目の前のお子さんの強みや弱み、現在の心や体の状態は把握していますか?
目的と手段を定めたとして、実際にその手段に取り組むのは目の前のお子さんなのです。
いくらあなたが自分にとって最高だと思って吟味したとしても、それが目の前のお子さんにとっても最高であるかどうかは分かりませんよね。
だからこそ、目の前のお子さんの「実態」を注意深く観察し、目的と手段に照らし合わせなければなりません。
今のA君にとって、スイングスピードを速くすることは優先すべき目的なのか?今はまずフォームを固めることが先決ではないか?と、一人一人に合わせて十分に検討する必要があるのです。
更に、手段についても同様です。
スイングスピードを速くすることを目的としたならば、どのような手段を用いることがA君にとって最適なのか。
A君はまだ年齢が小さく筋力トレーニングを行うには骨や筋肉の発達が不十分でケガのリスクがある。
だから今は素振りを中心にメニューを組んでみよう。
というように、その子の実態に合わせた方法を考えていかなければならないのです。
時々、公園で野球好きのお父さんがまるで同じ命令を繰り返すようプログラミングされたロボットのように根性第一の指導を続けている姿を見かけますが、目の前のお子さんが全く見えていなくてガッカリしてしまいます。
冒頭で例に挙げた少年野球のコーチも同じですね。
彼らは子供の力を伸ばすためにやっているのではなく、自己満のために指導をしているにすぎません。
自分の欲求を満たすために指導をしているのです。
正直、一刻も早く指導の現場から退いていただきたいものですね。
「目的」「手段」「実態」は三位一体
これまで説明してきた目的・手段・実態はそれぞれ相関関係にあります。
どれが欠けても成立せず、それぞれが繋がることで子供の成長に結びつくのです。
図で表すと、以下のような関係になります。
野球などのスポーツ指導でも、学校での学習指導でも、そして、家庭でのしつけでもこの図に当てはめて考えることで、今のお子さんにとって最適な方法が浮かび上がってきます。
意味のないしつけや指導で無駄な時間を過ごすことのないよう、大人の見極め力を高めていきましょう。
あとがき
最近嵐の櫻井くんが主演のドラマで「アクティブラーニング」について取り上げられていますが、これも上の三つを見極めないと形骸化してしまうので実はとっても難しいものなんですよね。
逆に、この三つを吟味したうえで実践すると、子供たちのものすごく生き生きとした姿を見ることができます。
本当に子供たちは素直だなぁと感じますね。
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