「失敗は成功の元」ではありません。
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第5回目となるレジリエンスについての記事。
(参考)
今回は、第3回で紹介したレジリエンスを育む4つのステップのうちの2つ目、「成功体験を積む」ためのポイントについて紹介していきます。
目次
まずは家庭で成功体験を!
2つ目のステップも、やはり基本は家庭です。
一番安心できる家庭で、他者を頼ったり成功体験を積んだりしながら「頼ることのよさ」を感じさせることで、社会や地域においても他者と協働できる力を育てていきます。
まず押さえなければいけないところについて説明した後、目標の決め方やおすすめの共同作業について紹介していきます。
子供は失敗からは学べません。
古くから「失敗は成功の元」と言われていますが、これは様々な手立てを講じたにも関わらず、失敗してしまった場合にもう一度奮起を促すために使われる言葉です。
初めから失敗を見越して何も手を出さなかったり、何の手立てもしていないのに慰めの意味だけで使うのとはわけが違います。
この言葉を都合よく解釈して、「たくさん失敗するのがいい」なんてことを言う大人を見かけることがありますが、とんでもありません。
失敗はできるだけ少ない方がいいに決まっているのです。
特に、子供は失敗をすると自信を失います。
そのため、できる限り失敗を減らしていけるよう、親が手助けしていく必要あるのです。
ちなみに、私たち人間はついついできないところや失敗したところに目が行きがちです。
1日の中で7:3くらいの割合で失敗を重視している傾向があるともいわれています。
本来ならば、7:3かそれ以上の割合で成功を重視したいのですが、それができている大人はあまりいません。
まずはあなたから、成功重視のかかわり方を始めてみてくださいね。
苦手はOK。嫌いをなくすために。
誰にでも得手不得手はあります。
苦手なところであっても、自分一人で無理に頑張ろうとすると失敗し、自信を失います。
一度自信を失うと、その活動を避けるようになり、更にその課題が苦手になっていくのです。
こうなると、もう悪循環を止めることができなくなってしまいます。
苦手なものが、大嫌いなものへと変わる瞬間です。
ここで一つ、私の経験をお話しします。
私はかつて、歌うことが好きでした。上手ではないことは分かっていましたが、歌うことは楽しかったし、友達とたくさんで歌えばそれほど音痴なことは気になりませんでした。
しかし、中学校の時、一人一人全員の前で行う歌のテストがあり、そこで私は先生から全員の前で音痴を指摘されました。
それ以来、歌が大っ嫌いになりました。
苦手だけど好きだったものが、苦手だし大嫌いなものへと変わってしまったのです。
歌は本来、心を楽しく豊かにする素敵なものです。
しかし、私にとっては過去のトラウマを呼び起こす悲しいものになってしまったのです。
このような悲しく、辛い思いを子供たちに経験させたくはありません。
苦手なことは全く悪いことではありません。
苦手だけど好き、苦手だけど楽しい、と思えるように他者の力を借りながら自分なりに取り組むことができればそれで満点なのです。
苦手なことは頼ってもよいことを、小さいうちからお母さん・お父さんが折に触れて伝えていく必要があります。
また、お母さんとお父さんもそれぞれ苦手なことは助け合っていることを伝え、その姿を見せることも非常に効果的でしょう。
家庭でできる目標の決め方
あなたはお子さんと目標を決めるときどのようにして決めていますか?
私が目標について話をするとき、以下の3つの流れで目標を決めることをおすすめしています。
①目標にしたいことを箇条書きにする。
②箇条書きで出した目標候補を、
「すでにできること」
「ほとんどできていること」
「もう少しでできること」
「難しいこと」
「やったことがないこと」
の5つに分類します。
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③5つに分類した中の、「ほとんどできていること」に分けられた目標候補の中から目標を決める。
いかがでしょうか?
「え?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、ほとんどのご家庭で「もう少しできること」か「難しいこと」を目標にしているのです。
大人にとってはちょうどよいレベルの設定であっても、子供は大人と同じようには歩めません。
経験が未熟な子供たちは、紆余曲折、試行錯誤しながら少しずつ発達していくのです。
目標達成に近づいたのにある日突然大きく後退してしまったなんてことは一度や二度でなないでしょう。
そういった子供の歩むペースを考えに入れると、「ほとんどできること」を「できること」へレベルアップさせるのがちょうどよいのです。
ある程度できていることをもう1歩頑張らせることはそれほど難しくありません。
そのため、成功場面を多く設けることができ、大人もほめやすいですし、子供にとっても自信がつきやすい好循環が生まれるのです。
今まであまり意識せずに目標を決めていた方や、目標のことなど考えてこなかった方は、ぜひ試してみてください。
家庭でできる成功体験を積みやすいおすすめの共同作業
家族で楽しみながら一緒に成功体験を積むことができるおすすめの作業について。
これはズバリ「料理」です。
料理は、子供にとって一人で全て行うことはほぼ無理です。
しかし、「共に作る」ということであれば子供にもできることはたくさんあります。
食材を洗う、皮をむく、簡単な形に切る、鍋に入れる、配膳をする・・・。
味見だって立派な共同作業の一つです。
このように、料理は共同作業の宝庫。
しかも、作業が進むにつれて、出来上がる様子が目に見えてハッキリと分かりますから、達成感も感じやすいのです。
私がかかわっている親子でも、子供と一緒に料理に取り組んでいる家庭は親子仲が良好である場合が多いです。
子供にとって料理は憧れでもあり、楽しい実験でもあります。
土日どちらかのお昼ごはん、など余裕がある時で構いませんのでぜひ一緒に取り組んでみてください。
他者に頼る基礎も親の姿から
社会や地域に目を向けてみると、人の手を借りるのがすごく上手な人もいればそうでない人もいます。
もちろん、本人の性格や状況による部分もありますが、親の影響も大いに関係しています。
親が、素直に他者の手を借りることができたり、礼儀正しく他者と関わる姿を見せている場合、子供も同じように育っていきます。
反対に、他者に対してぞんざいな態度を示したり、独りよがりな態度でいたりすると、子供も同じようなふるまいを身に付けていきます。
「子供は親の写し鏡」と言われることがありますが、まさにその通りなのです。
子供の他者とのかかわり方や礼儀が気になる時には、まずご自身のふるまいを見直してみましょう。
このとき、外での姿に思い当たる節がなくても、配偶者間でのやり取りが適当になっている場合が意外と多いです。
配偶者に対して冷たかったり適当であったりすると、子供はそのやり取りを身に付けるようになります。
ぜひ、お母さん・お父さんが日常的に良い習慣を実践するよう意識してみてください。
こういったふるまいは言葉では伝えづらく、教えてもなかなか身に付くものではありませんが、親が自ら実践するとすんなり身に付くことが多々あります。
「背中で教える」という昔からの言葉が当てはまる事例かもしれませんね。
成功体験を積むことで、他者と好意的に関われる心を育てる
レジリエンスを高めるためには、他者と協力したり助けてもらったりすることが欠かせません。
その基礎として、家庭で成功体験を積むことで、他者に対して素直に協力を要請できる心が育つのです。
人に頼ることの安心感を感じられるよう、失敗を減らし、成功を増やす工夫をしていってくださいね。
(あとがき)
「お手伝いをするとお小遣いをあげる」というシステムを取り入れている家庭を時々見かけます。
悪いことではないのですが、個人的にはあまりおすすめできません。
理由は、行動の動機が「お金をもらえるから」という発想になりやすいからです。
つまり、お金がもらえないならお手伝いや人助けはしない、という考え方になってしまう恐れがあるのです。
社会生活を営む上で、人と人との支え合いは欠かせません。
そういった支え合いに参加できるよう、その取り組み自体を認めてあげてやる気を伸ばすような言葉かけをしていきたいものですね。
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