IQって何?WISC-Ⅳの結果の見方と支援の手立て4選
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近年、子供たちの発達のアンバランスさを見取るために、知能検査が活用されているのはご存じでしょうか?
お子様の発達が気になって自治体の相談窓口や療育センターに行ったことがある方は、
知能検査を勧められたことがあるかもしれません。
この知能検査にはいくつか種類があるのですが、現在広く使われていて代表的なものが、
今日紹介する「WISC-Ⅳ」(ウィスクフォー)という検査です。
検査を行うと、報告書をもらうことができるのですが、この結果を見ても、
何となくグラフと数字が書いてあることしか分からない、という状況になる方が多くいらっしゃいます。
検査者のコメントもついているのですが、定型文を基に報告書を書いていますので、何となく堅苦しくて
読みにくく、結局何を言っているのか分からない、という方も多いようです。
そこで本日は、お子様のWISCの検査結果をどのように読み取り、また、どのように生活や学習に
生かしていけばよいのか、ということをお伝えしていきます。
目次
WISC-Ⅳとは
まず、WISC-Ⅳの概要について説明します。
WISC-Ⅳとは、ウェクスラー式知能検査のことで、世界で広く利用されています。
5歳0か月~16歳11か月の子供に対して実施することができる検査です。
まずは、児童用ということを押さえておいてください。
ちなみに、同じウェクスラー式検査には、
WPPSI(ウィプシー):3歳10か月~7歳1か月
WAIS-Ⅲ(ウェイズスリー):16歳~89歳
というそれぞれ幼児用、大人用のものがあります。
WISC-Ⅳの検査時間は、おおよそ60~80分間で行われ、
検査は10個の基本検査と5個の補助検査で構成されています。
※補助検査とは、何らかの理由で基本検査が実施できない(または無効)時に実施する検査です。
各項目の見方
評価点合計
検査で得られた純粋な点数のことを示します。
合成得点
評価点を基に、換算表を用いて導き出した得点になります。
結果として見る数値は、この「合成得点」です。
100を平均とし、その上下のばらつきを見て、発達水準を推定することができまうs。
パーセンタイル
その検査項目について、100人のうち下から何番目か、という指標です。
数が小さいほど認知発達の水準が低く、大きいほど認知発達の水準が高いということになります。
パーセンタイルが「18」だった場合、100人の内下から18番目ということになります。
信頼区間
測定値の信頼度と推定される数値の幅を示しています。
FSIQ=93 90%信頼区間 FSIQ=90~101の場合、
「FSIQは93でしたが、信頼度は90%で、90~101の間に位置すると推定されますよ。」ということです。
WISC-Ⅳの構成要素
知能(FSIQ)=Full Score Inteligent
FSIQとは、これから紹介するVCI,PRI,WMI,PSIの4つの評価点合計を合わせたものから得られる得点です。
つまり、全般的な認知発達の水準を推定するための数値であるといえます。
100を基準とし、全体のどの程度の水準に位置するのかを知ることができます。
一般には、得点によって以下のように分類されています。
FSIQ | 分類 | 理論上の割合 |
130以上 | 非常に高い | 2.2% |
120~129 | 高い | 6.7% |
110~119 | 平均の上 | 16.1% |
90~109 | 平均 | 50.0% |
80~89 | 平均の下 | 16.1% |
70~79 | 低い(境界知能) | 6.7% |
69以下 | 非常に低い | 2.2% |
※境界知能とは、知的障害の水準までは低くないが、平均よりは低い知能指数のことを指します。
言語理解指標(VCI)=Verval Comprehension Index)
VCIは主に言語に関する理解度を図る指標になります。
言語概念の獲得や言語を用いた推論、言語的な知識量などを測定することができます。
以下のような場合、VCIの数値が低く測定されることがあります。
・活字に触れる機会が少ないなど、言語を育てる環境が十分でない場合
・言語をつかさどる左脳に障害がある場合
・脳の障害によって、長期記憶の想起に困難さを示す場合
知覚推理指標(PRI)=Perceptual Reasoning Index)
PRIは非言語的な領域の発達水準を図る指標になります。
大きく、推理・認知・協応に分かれます。
目と手の協応動作が不得手な場合、この数値が低く測定されることがあります。
また、空間処理能力を測定する検査ですので、大脳の頭頂部が関わっています。
ワーキングメモリー指標(WMI)=Working Memory Index
WMIは短期記憶の能力を測定する指標です。
短期記憶とは、記憶(情報)を一時的に保持し、操作をする能力です。
以下のような場合、WMIの数値が低く測定される場合があります。
・注意集中の力が弱い場合。(自閉症傾向の児童によく見られる)
・検査時に不安が強い場合。(不安を処理するために脳が働き、記憶のための働きが小さくなる)
処理速度指標(PSI)=Processing Speed Index
単純作業を処理する能力を測定します。
目と手の協応動作が苦手場合、単純に処理する速度が遅くなるので、PSIが低くなります。
支援が必要な場合によく見られる結果のグラフ
言語理解(VCI)と知覚推理(PRI)が低い結果グラフ
理解や推論などの抽象的な思考力に弱さが見られるので、小学校高学年以降の学習に入ると、困難さを感じ始める可能性があります。
また、VCIとPRIという視覚に関わる領域が弱いので、どちらかといえば聴覚優位(耳からの指示や情報の方が入りやすい)の可能性が高いです。
・聞いた情報を一時的に保持・操作する力
・単純な作業を素早く処理する力
・言葉を理解し、推論する力
・目からの情報を処理し、推論する力
上記のようなグラフの場合、本人がもっている力以上に頑張りすぎてしまい、負担過重になっている可能性があります。
そして、負担過重による心身の不安定さから、行動面に問題が出てしまうケースも見られます。
車に例えると少しわかりやすいかもしれません。
言語理解と知覚推理は本人のもっている本質的な能力です。
そのため、車でいうとエンジンの部分に当たります。
そして、ワーキングメモリーと処理速度は実際に出力する能力で、車でいうとタイヤの部分に当たります。
このとき、車のエンジンに対してタイヤが大きすぎて、無理やりタイヤを回している状態です。
本人の力量以上に無理をしているので、いずれきつくなってくる時がきてしまうのです。
ワーキングメモリー(WMI)と処理速度(PSI)が低い結果グラフ
ASD(自閉症スペクトラム)やADHD傾向の児童によく見られる結果グラフです。
・言葉を理解し、推論する力
・目からの情報を処理し、推論する力
・聞いた情報を一時的に保持・操作する力
・単純な作業を素早く処理する力
言語や視覚的な情報に対しては強いですが、耳からの情報や記憶、単純作業が苦手な傾向にあります。
そのため、自分のもっている実力を十分に発揮できず、みんなより行動が遅れたり、能力に見合った結果を出すことが難しかったりする姿が見られます。
先ほどと同じように例えるならば、車のエンジンに対してタイヤが小さすぎて、大きなエンジンの性能を生かしきれていない状態です。
もっている力量ほどの力が発揮できていないので、本来の能力より低い評価を受けやすい傾向があります。
一人ひとりの強みに合わせた支援の方法
ここからは、読み取った検査結果をもとに、子供の強みに合わせた支援の方法について紹介します。
原則として、支援は苦手よりも得意なところに着目します。
理由は、長所を活用した支援・指導は学習効率が高く、学習成果が上がりやすいためです。
学習成果が上がることで、自信が深まり、学習意欲につながるのです。
①言語理解指標(VCI)の数値が高い児童への支援
言語理解が優れいてる児童に対しては、以下のことを重視して支援することが大切です。
・言語的手がかりの重視
・解き方の言語化の重視
発達支援の場では、「情報を図示すると分かりやすくていいから全て見える化すべきだ!」と盲目的に唱える人もいますが、このタイプの児童の場合、それでは逆効果です。
一度に入ってくる視覚情報が多すぎると、それを処理することができなくなってしまうのです。
それよりも、言語的な能力に優れていますから、丁寧に言葉で説明してあげることが大切です。
耳からの情報処理が得意ですので、しっかりと話している人の方へ意識を向けさせることで、十分な理解を促すことができます。
そのため、話をするときには、「まず相手を見る」ことを意識させ、話を聞く環境を整えてあげることが重要です。
家庭で忘れ物や準備をスムーズにできるようにするためには、やるべき時間にタイマーなどで知らせたり、手順を言語化して用意しておいたりするといいでしょう。
何か情報を記憶するときなどは、語呂合わせや歌にして覚えることで、より覚えやすく力を発揮することができるようになります。
VCIが高い児童の場合、例えば漢字の学習では以下のような教材を活用することをおすすめします。
②知覚推理指標(PRI)の数値が高い児童への支援
続いて知覚推理が高い児童への支援についてです。
・空間的手がかりの重視
・具体的な操作の重視
知覚推理が高い児童の場合、視覚優位なことが多いので、図示による構造化が有効です。
家庭の場合、やるべきことをイラストカードなどにして壁に貼ったり、やるべき時間を時計カードに書いて見える化することで、何度も言われて怒られる、ということが少なくなってきます。
何か記憶するときには、図やイラストに例えたり、場所と関連させて覚えたりすることでスムーズに記憶できるようになってきます。
また、具体的操作によって力を伸ばすことができますので、本物との触れ合いを大切に、様々な体験的活動を取り入れていくといいでしょう。
例えば漢字の学習の場合、以下のようなカードを使うとスムーズに覚えられるようになります。
③ワーキングメモリー指標(WMI)の数値が高い児童への支援
続いて、ワーキングメモリーが高い児童への支援です。
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・集中力の高さを活用
ワーキングメモリーの数値が高い児童への支援は、ずばり「メリハリ」です。
短期的な情報の保持・操作の強さ、集中力の高さを生かして、短期集中で一気にいろいろなことに取り組みましょう。
家庭で宿題や持ち物用意をするときには、「〇時~△時の間にやる」と決めて、決めた時間になったらとことんそのことだけに集中できるようにするといいでしょう。
このタイプの児童は長時間集中することは難しい場合が多いです。
大人も、初めから短期決戦を覚悟して、決めた時間で全部片づける気持ちで接しましょう。
取り組み始めると、作業興奮というより集中力が発揮される状態になりますので、もっている力をかなり高い水準で発揮することができます。
しかし、集中しすぎて「過集中」状態になると、そのあと一気にエネルギーがなくなる状態になるので、オーバーワークになりすぎないように、周囲の大人が見守っていく必要があります。
タイムタイマーなどを使いながら、時間を可視化して区切ることで、大きな力を発揮できるようになるでしょう。
タイムタイマーはちょっとお高い・・・という方は↓がおすすめです。
④処理速度指標(PSI)の数値が高い児童への支援
最後に、処理速度が高い児童への支援についてです。
・視覚記憶の活用
目と手を関連させた動作が得意ですから、その強みを生かしましょう。
見ながら書く、細かい動きなどが上手にできる場合が多いので、細かい作業から自信を深めていけるようにするとよいです。
運動面でも得意なことがあるタイプなので、得意な動きを見つけて、それを基に運動の幅を広げていけるようにすると、自己肯定感の高い、自信をもった子供へと成長していきます。
単純作業をスピーディに進められるので、家庭では簡単なお手伝いをお願いすることで自分の力を発揮させ、認めてあげる機会を増やすことができるようにしましょう。
子供に合った方法、ペースで学習を進めることが大切!
上記の内容を踏まえて結果を読み取ることで、子供の得手不得手を把握できます。
しかし、把握しただけで満足してしまうご家庭が多いことも事実です。
大切なことは、その得手不得手に合わせた学習環境を整えてあげることなのです。
よく、「塾に行かせた方がいいのですか?」という相談が寄せられます。
私個人の考えとしては、塾よりは家庭教師の方が良いとアドバイスしています。
理由は以下の4点です。
①自分が安心できる環境で学習できる。
(初めての場所や刺激が多い場所だと学習に集中できない子供は多いです)
②1対1なので、本人に合った内容、ペースで学習できる。
③コストパフォーマンスが高い
④合わなかった場合に替えやすい、辞めやすい
何とか学習面でサポートができないかと考えている親御さんはぜひ、家庭教師を選択肢に入れられるとよいと思います。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
なかなか細かい数値を読み解くのが難しいWISC(ウィスク)の検査。
ですが、数値を理解して、結果と照らし合わせながら子供を見つめることで、今まで見えてこなかった強みが見えてくることと思います。
最後に、一つだけ意識していただきいことがあります。
WISCで測定した知能は、環境や年齢、その時の心身の状態によって上がったり下がったりするものですが、勉強で伸ばすものではありません。
WISCによって測定した検査結果(知能)で見ているものはその子の得意不得意のスタイルです。
知能の数値が重要なのではありません。
大切なことは、その子のスタイル(長所)に合わせた指導法で学力を伸ばすことです。
そこを忘れずに、お子さんの良いところをたくさん見つけていってほしいと思います。
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