集中できないのは感覚過敏が原因?タイプ別対処法とは?
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家で宿題をしている時、なかなか集中できない子。
学校で授業を聞いている時、キョロキョロして落ち着かない子。
あるいは、ぼーっとしてなかなか課題に手をつけない子。
家や学校でこのようなお子さんの姿を見ること、意外と多いのではないでしょうか。
このような姿がひんぱんに、あるいはいつも見られる場合、少し注意してお子さんの様子を見る必要がありそうです。
目次
感覚過敏で集中できない!
一言でいうならば、「刺激が多すぎて処理しきれない」状態です。
大人でもそうですが、子供は特に刺激に敏感です。
自閉症やADHDなど、発達障害の傾向のあるお子さんの場合、一層敏感な場合があります。
大人では気にならないような刺激でも、子供にとっては十分集中を阻害する要因になります。
このように、刺激に対して強く反応してしまう状態を「感覚過敏」といいます。
感覚過敏によって刺激が処理しきれない場合、子供の姿は大きく2つのタイプに分かれます。
1つは、暴れる、大声を出す、離席するなど、処理しきれない状態を外に出すタイプです。
自閉症傾向のお子さんで、パニックになる場合などはこのタイプであることが多いです。
もう1つは、全くの無反応に近い状態になるタイプです。
ぼーっとしてしまって、話しかけも反応が鈍い状態で、ずっと上の空のような様子が見られます。
これは、刺激が強すぎて処理しきれず、結果として何の反応もできない、という状態です。
私たち大人も、自分の処理の追いつかないものを見ると、反応できないことがありますよね。
(F-1の車の動き、目にも止まらぬ速さのボクシングなど)
「一瞬、何が起こったのか分からず反応できなかった」という状態が起きているのがこのタイプです。
一見すると、全く違うお子さんに見えますが、どちらの場合も原因は感覚過敏によるもの、という場合は結構多いものです。
刺激ってどんなもの?
どのような刺激が感覚過敏を引き起こすのかについては個人差があるので一概には言えません。
ですが、普段生活の中で何ともないような刺激であっても、感覚過敏の子には苦しい刺激になることが多々あります。
例えば光。
普通の電気の明かりであれば、私たちは特に不快感を覚えることはありません。
ですが、感覚過敏をもつ子にとっては、カメラのフラッシュがたかれたように強烈な光が差し込んでくるように感じることがあります。
ずっとカメラのフラッシュほどの光が自分の目に入ってくるのに勉強に集中することができるでしょうか。
大人でも不可能でしょう。
また、目は最もたくさんの情報を処理する器官です。
光に限らず、文字や絵などの情報も、刺激となって入ってきます。
そのため、壁中に貼りものがしてあったり、文字などがたくさん綴られている掲示板などがあったりすると、そちらに気が向いてしまい、集中できない、という状態を引き起こすことがあります。
音の場合はどうでしょう。
感覚過敏をもつ子は、遠くのなんでもない音と近くの音が同じ大きさで聞こえたり、嫌な音の不快感が倍増して聞こえたりすることがあります。
外の体育の準備運動。
私たちは「体育やってるな~」程度の感じ方ですが、聴覚の感覚過敏をもつ子には、耳元で準備運動の掛け声を叫ばれているような感覚に近いのです。
目の時と同様、これでは集中できませんね。
また、皮膚(触覚)の過敏をもつ子もいます。
砂遊びや土いじりを異様に嫌がる場合、この傾向があるかもしれません。
衣服も、化学繊維の入ったゴワゴワした肌ざわりのものは着られない子もいます。
さらに、タグがついているだけでその感覚が気になる子もいます。
一人として同じ子供がいないように、感覚過敏も一人一人によって症状が異なります。
同じ聴覚の過敏でも、トイレの水が流れる音が気になる子、ドライヤーの音が気になる子、時計の秒針が気になる子・・・それぞれ感じ方は違うのです。
まずは、集中できないのはその子が怠けているからではなく、感覚過敏によって集中できなくなってしまっているのかもしれない、という視点をもつことから始めましょう。
タイプ別の感覚過敏対処法!
それぞれのタイプ別に、感覚過敏に対してどのような対処をすればよいのか紹介していきます。
その前に、感覚過敏への対処の大前提として、以下の3つのポイントを意識するようにしてください。
①環境を整える
→感覚過敏は我慢させるものではありません。物理的に刺激を減らすことができるなら、迷うことなく取り除いてください。
②アイテムを使う
→感覚を鈍らせるアイテムを活用しましょう。以下でも紹介しますが、アイマスク、イヤーマフなど。
③見通しをもたせる
→どうしても避けられない刺激がある場合は、事前に伝えておきましょう。対処法まで一緒に考えられるとベスト。
目の感覚過敏
目の感覚過敏は、日常生活の中でも困り感を抱えることが多いです。
どうしたって情報が流れこんできますし、目を閉じたまま生活することはできません。
そのため、環境面での配慮とアイテムの活用がカギとなります。
また、外出時に大きな駅などを利用する場合、人の多さ、電光掲示板などの情報の多さなど、刺激が極度に強く、パニックを起こしたり迷子になったり動けなくなったりしてしまう可能性があります。
予想される困難 | 対処方法 |
電気の光が気になる |
サングラスを使う 電気を間接照明など、やわらかい光のものにする。 |
貼りものが気になる。 |
壁などに貼るものは最低限必要なものにとどめる。 学校の場合、黒板の周りや教室前方には何も貼らない。 |
人が気になる。 | 教室の座席を一番前の方にする。 |
耳の感覚過敏
耳は過敏になると、パニックを起こしやすい(耐え難い)特徴があります。
分かりやすい例を紹介します。
黒板を爪でひっかいた時の音を思い出してみてください。
あの音がずっと続いたら、とても耐えられませんよね。
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聴覚過敏の状態は、それに近い状態になっていると考えてください。
聴覚過敏の対処方法は基本的に耳栓(イヤーマフ)をするか、事前に伝えて見通しをもたせるかです。
音の方を止められればよいのですが、そういった状況はあまり多くはありません。
聴覚過敏になるような状況は挙げればキリがありませんが、いくつか紹介します。
・時計の秒針の音→時計を音の出ないものにする。
・トイレの水が流れる音
・ドライヤーの音
・体育の準備運動の掛け声→窓を閉める
・隣のクラスの騒ぐ声→ドア・窓を閉める
・エアコンの音→止める、風量を一番弱いものにする
・テレビの音
・電車の音
・鉛筆の音
・チョークの音
これらの日常生活で普通に聞こえてくる音に対して、過敏に受け取ってしまい、苦しさを抱えてしまいます。
また、非日常的な大きな音が突然聞こえてくると、刺激を処理できずパニックになることがあります。
大きな音とは例えば、
・カミナリ
・花火
・運動会のピストル
・サイレン
・泣き声
・どなり声
・マイクの音
・スピーカーの音
・アラーム
・チャイム
などがあげられます。
突然の音といっても、カミナリや花火、運動会のピストルなど状況によってはある程度予想できるものもあります。
その場合には、「天気が悪くなってきたからカミナリが鳴るかもしれないよ。」と伝えておきましょう。
子供が怖がる場合や必要と感じたら、イヤーマフや耳栓をつけておくとよいでしょう。
触覚の感覚過敏
触覚がかかわることに関して敏感なお子さんもいます。
特定の素材の服しかきれない、触れないものがあるなどの困難さを抱えていますが、突然パニックになるというより、そのような状況を拒否・抵抗する場合が多いです。
我慢している場合には、パニックになるほどの大きな困難というより、ジワジワと締め付けられるような不快感やかゆみなどを感じることがあり、とても嫌な感じがするそうです。
これは環境を整えることやアイテムを活用することで事前に防げる場合が多いので、大人がどんどん不快なものを取り除いてあげるようにしましょう。
予想される困難 | 対処方法 |
洋服のタグが気になる | タグを切る。(切れ端だけでも気になる場合もあるので注意) |
特定の素材のものしか着れない |
その素材の洋服(下着)を用意する。 ※化学繊維を嫌い、綿100%を好む場合が多いです。また、肌に合う服が見つかれば、複数買っておくと便利です。 |
土・砂が触れない | 軍手をつけさせる。それでも難しければシャベル(スコップ)などを使用させる。無理はさせない。 |
手袋を嫌がる |
不必要な場面ではさせない。 必要な場面では、軍手、ゴム手袋、ポリ手袋など数種類用意し、最も抵抗の少ないものを選ばせる。 |
急に触られることを嫌がる | 触る前に「〇〇を触るよ。(触ってもいい?)」と声をかける。 |
手が汚れることを異様に嫌がる |
手袋が大丈夫であれば手袋をさせる。 いつでも洗いにいって良いことを伝える。 |
嗅覚の感覚過敏
特定のにおいを嫌がる子もいます。
例えば化粧品や花、あるいは食品や料理など。
嗅覚の過敏をもつ場合、まずはどんなニオイに対して嫌悪感を示すのか、ある程度傾向を知っておくと対処がしやすいです。
嗅覚の対処法としては、できる限り近づかない、マスクをつけるということが挙げられます。
マスクをしておくことで、外からのニオイをある程度防ぐことができます。
また、自分の好きなニオイを調べ、持ち歩くというのも有効な方法です。
例えば、化粧品のニオイが苦手だけど、せっけんのニオイが好き、という場合は、せっけんの香料を含ませたハンカチなどを持ち歩くことで、デパートなどでも安心して過ごせるようになります。
口の感覚過敏
味覚や舌ざわり、喉越しなどに敏感な子もいます。
特定の味がもの凄く嫌いだったり、粘り気のあるものは全く食べられなかったり・・・。
よくある例としては、白ご飯に何かがかかっているだけでダメというタイプです。
〇〇丼はもちろん、カレーライスや炊き込みご飯、チャーハンなど、白ご飯以外の米は食べられないというお子さんは少なくないです。
これらの対処法としても、基本は嫌なものは無理に食べさせないようにしましょう。
給食でどうしても厳しい場合は、事前に食べなくてもいいよう相談するか、お弁当をもっていくことなどの方法も検討することが必要かと思います。
舌触りや食感が嫌な子に対して無理やり食べさせるという指導はもってのほかです。
ジャリジャリした砂を食べろ、と言われて私たちは食べられませんよね?
感覚過敏をもつ子にとって、苦手な食品の食感はそのように感じられることもあるのです。
ただ、長い目で見た場合、いろいろな料理を食べられた方が良いことは間違いないです。
なので、少しずつ、いろいろな料理に挑戦してみるのがよいでしょう。
もちろん、無理はさせません。
大好きなメニューをベースに、少しだけ挑戦メニューを入れてみる。
といった感じで進めていくとよいでしょう。
自分なりの対処法を身に付けさせる
子供のうちは大人が環境面を整えることが大切ですが、自分で整えられるようにしていくことも大切です。
「自分は〇〇の刺激が苦手なんだな。」
「〇〇の刺激には△△という対処方法が有効だ」
このように、自分の苦手な刺激と対処方法を知っておくことで、大人になった時に自立して困難に対応することができます。
小学校中学年くらいまでは大人が積極的に環境を整えたりアイテムを活用したりするサポートを行った方がよいですが、高学年~中学校段階に入るにつれ、子供と一緒に「どうするのがいいと思う?」など考えながら対処していくとよいでしょう。
勘違いしないでほしいのは、「独り立ちが大事だから自分に決めさせる」といって放置すればいいというわけではありません。
それでは子供の力は伸びません。
親や先生などの大人と一緒に考え、取り組む中で力をつけていくものです。
ぜひ、お子さんの集中できる環境を整え、お子さんが本来もっている良さを引き出してみませんか?
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