感覚鈍麻って何?失敗しないための手立てとは?
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前回は「感覚過敏」について取り上げましたが、実はその反対の「感覚鈍麻」というものもあります。
これは、様々な刺激に対しての感覚が鈍く、反応が薄い(あるいはしない)状態を示します。
一見すると、感覚過敏よりは気にならない感じがします。
確かに、外から見て目立つ行動などはないので、害は少ないと感じるかもしれませんが、気をつけないとある意味感覚過敏以上に苦労することもあります。
代表的なつまずきと対処法を一緒に確認していきましょう。
目次
感覚鈍麻だと何が困るの?
感覚鈍麻で一番困るのは生理的現象に対する反応の鈍さです。
以下に、例を挙げながら説明していきます。
排せつ
私たちは、尿意や便意を感じることができるので、自分でトイレに行き用を足すことができます。
しかし、感覚鈍麻をもつ子の場合、尿意や便意といった排せつの感覚を感じにくいのです。
体の機能自体は正常に働いているので、尿も便も溜まっていくのですが、それを排せつに向かわせるための感覚を感じることができません。
すると、限界まで溜まったところで突然排せつすることになります。
つまり、「おもらし」をしてしまうわけです。
小学校中学年くらいでも、本当におしっこがしたくなる直前まで尿意に気付かない、という子は意外と多いです。
そして、からかわれたり悪口を言われたりした失敗経験から、二次障害につながってしまうというパターンも少なくありません。
排せつの失敗はニオイも見た目も目立つため、非常に大きな失敗経験となります。
普段、お子さんが大慌てでトイレに行くことが多いようであれば、少し注意してみるようにしてあげてください。
体温調整
感覚鈍麻の子は暑い寒いを感じるのも苦手な子が多いです。
真冬なのに半袖、あるいはタンクトップ姿になっていたり、逆に真夏なのに長袖を着ていたり。
普通であれば、暑さで苦しくなってくると「あつい~」とうだってきて辛いサインが分かりますが、感覚鈍麻の場合、その感覚が鈍いので、一見するとへっちゃらのように見えます。
しかし、暑さを感じることは苦手ですが、体温はグングン上昇しています。
限界に達したところで、突然バタンと倒れてしまう、ということもあるのです。
熱中症になるまで気付かなかった、という恐いこともあるので、注意が必要です。
上記の例は体温調整機能自体は正常だけれど暑さ寒さを感じにくい例でしたが、感覚鈍麻をもつ子の中には体温調整機能自体がうまく働かない子もいます。
分かりやすい例は夏だけれどまったく汗をかかない子です。
この場合、暑さを感じにくいだけでなく、体温調整機能も働いていないので、汗をかいて体温を下げることもできていません。
より熱中症などの症状にかかりやすい状態であるといえます。
身近にいる大人が対処法を知って、サポートしてあげることが必要でしょう。
痛み
痛みに対しての感覚が鈍いと大変危険です。
私たちは痛みによって、体の危険信号を受け取ります。
痛いということは体のどこかに異常があるということです。
その痛みが弱いうちに治療をすれば軽傷で済みます。
しかし、痛みに対する感覚が鈍い子は、軽症くらいの痛みは感じないことがあります。
大けがになるまでまったく気が付かずに遊んでいた、という子が結構多いです。
例えば、ジャングルジムなどで遊んでいて、高いところから落ちてしまったとします。
普通の子ならその場で泣きわめいたり、最悪の場合救急車を呼ぶような展開ですが、感覚が鈍い子はケロっと立ち上がったりします。
周りにいる子たちは、「すげー!」「お前落ちたのに平気なの!?」なんてちょっと盛り上げてしまいますから、落ちた本人もちょっと満足気に。
結局そのまま遊び倒して帰宅し、それから実は骨折していたことに気が付く、なんてこともあります。
落ちてすぐに病院に行っていれば軽い骨折(あるいはヒビ)で済んだかもしれませんが、そのまま遊んでしまったことで、骨折の症状がひどくなる可能性もあります。
また、痛みを感じにくいことは恐怖を感じにくいことにもつながります。
恐怖を感じないと、危険な行動を平然と行ったりしてしまうこともあります。
例えば、ものすごい高いところから飛び降りて遊ぶことなどが挙げられます。
擦り傷や切り傷をしたときも、痛みがないので放置して、そこからばい菌が入ってしまうということもあります。
一見それほど影響がないように見える痛みの感覚鈍麻ですが、気をつけないといけません。
感覚鈍麻への対処法
感覚鈍麻への対処法としては、感じにくい特性に対してアプローチをする方法と、感覚自体の発達を促す方法があります。
感覚自体の発達を促す方法(感覚統合)については、かなりのボリュームになるので、また別記事にして紹介させていただくことにし、ここではそれぞれの特性に対してどのようなサポートや手立てができるかを紹介していきます。
排せつ=ルールを決める!
尿意や便意を感じにくいので、「おしっこに行きたくなったらちゃんと言うのよ!」では効果は期待できません。
それよりも、「〇時になったら行く」と決めてしまった方が継続しやすく、効果が出やすいです。
幸い、学校は決まったスケジュールで動いています。
そのスケジュールを基に、トイレに行く時間を決めておくことで、おもらしをすることはほとんどなくなるでしょう。
「1時間の授業が終わるごとに行く」とか、「登校後すぐ、中休み、給食前、昼休みの終わりの4回行く」とか決めておくことで、本人の感覚に頼らず、迷うことなく排せつができるようになります。
ポイントとなるのは、行きたくなくても行く、ということを確認しておくこと。
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できれば、担任の先生や学校にもその特性を伝え、一緒に支援の体制を作ることが望ましいです。
保護者は学校でのトイレの様子まで確認することはできませんから、学校にいる間は先生に確認してもらうのです。
そうすることで、本人がトイレに行き忘れている場合に声をかけてもらうことができます。
体温調整=数字で決める
体温調整については、家庭にいる場合は親が様子を見てあげればよいのですが、学校ではなかなかそうもいかないので難しいケースです。
人間はそれほど体温の変化が激しいわけではないですし、都度体温を測るのも大変なので、できれば客観的数値(温度、湿度、暑さ指数)を目安にできると便利です。
特に、暑さ指数は温度と湿度に加え、日当たりなど周辺の環境をもとに熱中症の危険度を示してくれますので、「暑さ指数」を参考にするとよいでしょう。
(参考資料)
この資料を基に、「注意」のラインを超えたら半袖になる、日陰で休む、などのルールをある程度決めておくことが必要かもしれません。
また、水分補給が欠かせないので、「10分ごとに水分休憩をする」などのルールも必要でしょう。
以下の暑さ指数計などを、家庭や学校に置くことで目安になると思います。
痛み=大人のサポートとルールの徹底
痛みの対処法が最も難しいです。
なぜなら、遊びの中のことなので大人も見逃しやすく、子供も気付きにくいからです。
現状としては、できる限り遊ぶときには大人が見守る状況下にすることが1番です。
そして、危険と思われる行動については制限するなど、ルールを決めておくことくらいしか対応ができません。
しかし、遊びはできる限り制限したくないのも本音であり、そのバランスが難しいところです。
「傷ができたら・・・」とルールを決めるのも悪くないですが、傷ができたことに気付かなかったり、そもそも傷ができてからでは手遅れだったりする場合もあるので、最善手とはいえません。
この辺りの対処法、もし何か良いものがあれば、ぜひ皆さんのお知恵をお借りしたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
意外とこわい感覚鈍麻
感覚過敏より目立たないので見過ごされがちな感覚鈍麻ですが、実は生活の中で結構困ることが多いです。
また、生理的現象と直結するので、注意しないと重大な問題につながることもあります。
大切なのは、どんなことについて感覚が鈍いのかを把握すること、そして手立てを講じていくこと。
最終的には、子供自身が自分の特性を知り、自分で対処できるように育てることです。
適切な知識と方法を知り、上手に向き合っていくことが大切ですね。
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