
厚生労働省が8月17日に、速報値として発表した資料が話題になっていますね。
全国210か所の児童相談所が平成28年度に児童虐待相談として対応した件数が122,578件にのぼり、過去最多を記録しました。
年々右肩上がりに上昇している児童虐待の対応件数ですが、その内容について詳しく見ていきましょう。
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児童虐待の相談件数の推移
以下は、厚生労働省が発表した平成18年度から28年度までの相談件数の推移グラフです。
(※平成22年度は東日本大震災の影響により、福島県を除外)
(引用:厚生労働省報道発表資料「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第13次報告)及び児童相談所での児童虐待相談対応件数:児童相談所での児童虐待相談対応件数(別添2)」)
平成18年度から20年度はまではほぼ横ばい、
平成20年度から24年度まではゆるやかな上昇といったところでしたが、
平成24年度からは、傾斜が大きくなっていることが分かります。
数値の上でも、平成24年度から28年度まではほぼ1割~2割のペースで増加しています。
これは、児童相談所全国共通ダイヤル(189)の認知の広がりや、報道等による意識の高まりから
通告件数が増えたことが要因の一つであると考えられます。
報道資料では警察からの通告が増加と示されていましたが、学校からの通告も増加してきているのではないかと思います。
以前は、学校で虐待を把握していても通告に二の足を踏むような実態がありましたが、今は疑わしい場合には、「児童の命を守ることを最優先」という意識が高まってきているように感じます。
また、同様の理由で、学童保育所からの通告も増えてきているように感じます。
児童虐待相談の内訳
児童虐待と一口に言っても、中身は身体的虐待(暴力)やネグレクトなど様々です。
過去と比較してどのような内容の相談が多いのかについても見てみましょう。
(出典:同上)
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同じく厚生労働省から発表されている相談内容の推移についての表です。
平成18年度から23年度までは一貫して身体的虐待の割合が最も多く、次いでネグレクトの割合が多くなっていました。
しかし、相談件数が大幅に増加し始めた平成24年度では、身体的虐待(35.4%)と心理的虐待(33.6%)の割合がほぼ等しくなり、心理的虐待の相談件数が増加してきたことが分かります。
翌25年度から28年度まで、心理的虐待の占める割合が増加し、28年度では、ついに心理的虐待の割合が50%を超える結果となりました。
心理的虐待とは、言葉による脅し、無視、兄弟間での差別、子供の目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)ことなどが該当し、子供の心に大きな傷を負わせる虐待です。
ちなみに、ネグレクトの割合が年々減少していることも注目しておきたいポイントです。
ネグレクトとは、食事や衣服、衛生面での世話を怠り放置することで、いわゆる育児放棄とよばれるものです。
必要な食事を摂らせない、衣服を用意しない、排泄物等の始末を行わない、病院に連れて行かないことなどが該当します。
「虐待の顕在化」と「子育てに悩む親」の増加が読み解くカギ?
今回の厚生労働省の発表を受けて、注目すべきポイントを整理しましょう。
- 相談件数が12万件を越え、過去最多を記録した。
- 相談内容では「心理的虐待」が50%を越え、相談内容のうち、最も割合が多い。
- ネグレクトは20%台前半に減少している。
まず、相談件数の増加についてですが、これについては前述した通り、周囲による働きかけによるものであると考えられます。
警察や学校、地域など、子供を見守る方々の意識が高まり、今までであれば見逃されてきた事案が通告につながっている実態があります。
つまり、「虐待そのものの件数が増加した」というよりは、「今まで見逃されてきた虐待が明るみに出始めた」と考えるべきでしょう。
そういう意味では、子供が命の危険にさらされる前に、通告によって安全を確保する可能性が高まってきたとも受け取れます。
もちろん、虐待そのものの減少を目指すことは議論の余地なしですが、早期発見・早期対応の意識が根付いてきたことは肯定的に捉えてよいと思います。
次に、相談内容の推移から考えられることについてです。
かつては2番目の割合を占めていたネグレクトの減少。
それと入れ替わるようにして増加し、半数を越える割合を占めるようになった心理的虐待。
これが意味することは、「子育てに悩む親の増加」であると考えます。
まず、ネグレクトの割合が減少してきたことからも、子育てに参加しようとしている親世代の意識の高まりが読み取れます。
しかし、子育ては一筋縄でいくものではありません。
思ったような反応を示してくれない子供たち。
子育てをしていて、思い通りにすすむことなんて一握りあるかどうかだと思います。
うまくいかない育児にすり減る親の心。
ついついお利口な兄と比べてしまう、イライラして怒鳴りつけてしまう・・・。
誰しも経験があることだと思います。
そんな時、かつては地域の住民や自分の親世代に話を聞いたり育児を手伝ったりしてもらうことが度々ありましたが、昨今、そういった横のつながり、縦のつながりが希薄化してきています。
すると、悩む親はどうしていいか分からないまま、育児と向き合い続けなければなりません。
結果、またうまくいかないことの連続で負の連鎖が生じてしまうのです。
その結果として、子供に対して怒鳴る、脅す、子供の前で他のものや人に対して攻撃的になるという心理的虐待を引き起こしてしまうのです。
また、依然として高い割合を占める身体的虐待にもつながってくるのです。
まとめ:「子育てに悩む親」を救うために
児童虐待の背景には「子育てに悩む親」の姿があることが分かりました。
時々、ニュースで報道されるようなただ単にストレス発散のために子供に対して殴る・蹴るの暴行をはたらいて逮捕されるのはレアケースです。
目立つから報道されるのです。
着目すべきは、子供のために一生懸命に考え、手を尽くしているにもかかわらず、育児が思うようにいかず、心も身体も疲弊し、結果として児童虐待を引き起こしてしまっている親たちです。
お母さん、お父さんは本当に頑張っているのですが、相談できる相手がいないので、どうすればいいのか分からないのです。私自身、このように困っている親たちと何人も会い、相談にのってきました。
もしもこの記事を読んでくださっているあなたの近くに、子育てに悩むお母さん、お父さんがいたらぜひ手を差し伸べてあげてください。
助けようなんて意気込む必要はありません。
話を聞くだけでいいんです。
自分が子供の頃はこんな風に感じた、と思い出話をするだけでいいんです。
それだけで、お母さん、お父さんの心は軽くなります。
そして、もしも子育てに悩むお母さん、お父さんがこの記事を読んでくださっていましたら、ぜひこのサイトの各記事をご覧になってみてください。
お悩みを解決できるよう、できる限りの情報をこのサイトで発信していきたいと思っています。
また、近くの人や親世代、園や学校の先生など、誰か一人だけでいいので、勇気を出して悩みを話せる人を見つけてみてください。
少しだけかもしれませんが、きっと今より心が軽くなるはずです。
私も、皆さんのお役に立てるよう、微力ながら情報発信に尽力していきます。
お読みいただきありがとうございました。
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